6:TAXI






 とりあえず、宴席は盛り上がっている。盛り上がる内容が内容なだけに、時折ゆきがついていけなくなるのだが、それはそれで仕方ないこと、とゆきも割り切っている。なんたって、業種が違う。相手はいわゆる『芸能人』とも言えるのだから。

「ゆきちゃんはどんな仕事してるの?」
「え、あ……そうですね、主に発注作業とかそういうのですけど……」
「やっぱり毎日パソコンに向かい合って、って感じ?」
「はい、それはもう。パソコンと、システムが使えなかったら仕事にならないって感じです」
「そーなんだー。じゃ、やっぱりパソコンとか得意だったりする?」
「いいえ、全然! 仕事で使う内容なんて、結構限られてますから」

 ゆきの隣に座った滝口が、にこにことゆきに話しかけてくる。もちろん合間合間に他の人たちも話をしてくる。それほどの大人数でもないので、話題は一つに絞られ易い。それでも、ゆきが思ったことは一つある。

(……さすが、声が通る)

 声優と限らず、俳優や歌手はやはり声が通るものである。全員が全員、とは言わないけれども、やはり声を職業にしているだけに、彼らはとてもよく声が通るのだ。ちょっと一斉に笑い出せば、結構声が響いていた。
 彼らが仕事の話を始めてしまうと、ゆきはあまりよくわからないのでただ聞いているだけなのだが、それを聞いているだけでも心地よくなってしまう。なんといっても、やはり誰も彼もが声がいい。好みの声、苦手な声、というのはやはりあるとしても、この場にいる人たちの声は、それほど苦手ではなかったせいもある。
 まあ、そのなかでも彼女の好みのダントツは龍二で、龍二の声は特によく聞こえてくるような気がしていた。

「ゆきちゃん、明日はお仕事?」
「え、あ、いえ、明日は土曜日だからお休みです」
「いいなあ、土曜日休み! この中で明日休みのひとー!」

 大きな声で増田が聞くと、はーい、と手を上げたのは二人。龍二と甲野だ。他の面々は彼らをうらやましいー、と言っていた。

「こういう仕事だと、さすがに土日なんて関係ないからねー」
「でも真幸さんは明日休みなんでしょう?」
「うん、そう。明日は久々に丸一日オフ! あーもう、何をしようか、今から考えちゃうね!」
「嬉しそうですねえ」
「そりゃそうだよ! 丸一日オフってそんなに多くないからね。朝から一本だけ録りがあるとかだったらまだしも、夕方一本とかだと、一日なんだか微妙な気分だよー」

 わかるわかる! と他の面々も同じように話をし始める。この間、夜8時からの録りでそれまでずっと休みで掃除しまくった、とかそんなことを話はじめていた。
 とにかく彼らの生活時間はかなり複雑だということは、ゆきにも理解できた。確かに毎日朝が早いのはきつい。それでもほぼ確実に土日に休みがあるゆきは、恵まれていることもわかる。サービス業相手に考えても、それは恵まれているのだから。
 だが、彼らが相手では、その恵まれ度合いが半端ではない。
 朝いちに一本、夕方に一本、間五時間開いてしまう、ということもあるそうだ。そんなときは一度家に帰るとか、映画を二本立てで見てしまうとか、インターネット喫茶で時間を潰すとか、それぞれに過ごしているらしい。
 そんな会話をしながら、彼らは楽しく呑み過ごした。
 ゆきは会社の飲み会を抜けて参加なので、彼らもそれなりに呑んでからの時間である。ひっきりなしに話題は色々な方向へと飛びながらも、それはゆきにとっても楽しい時間でもあった。
 気分の悪い会社の飲み会のことは、すっかりと記憶の彼方に飛んだ頃、この場もお開きの時間になった。すでに、深夜0時である。

「あー、終電終わっちゃったねー」
「え!」

 吉川がそう口を開くと、一番驚いた声をあげたのはゆきである。まさかそんなに時間が経っていたとは、思ってもみなかったのだ。いくら途中参加とは言えども、そんなにゆっくりするつもりはなかったのである。

「タクシーだね、こりゃ」
「ゆきちゃん、大丈夫?」
「え、あ、はい。すみません、何かすっかりお邪魔しちゃって……」

 ゆきが申し訳なさそうに言うと、池畑がそんなことないよ、と笑った。

「なに言ってんの、楽しかったんだから、邪魔なんてことないでしょ。ね、マサ!」
「そうそう。池畑さんだって楽しかったでしょ?」
「おお、そりゃもう。いいね、若い子が一緒だと!」
「池畑さん、おじさんくさいですよ、それ」
「いーんだよ、おじさんなんだから。吉川くんもそうでしょ!」
「俺は若いですよ!」
「何それ! 吉川くんが若かったら俺も若いよ!!」

 そう言いながら、池畑と吉川がじゃれあっている。ゆきから見れば、それなりの年齢である二人ではあるが、その二人ともが見た目は相当若いのだ。おじさんとは言っても、若々しいなあ、とゆきは関心しきりである。
 会計を済ませ、店の外に出てそれぞれタクシーを捕まえはじめる。同じ方向の人は同じタクシーに、となって乗り込んでいった。

「ゆきちゃんはどこ?」
「あ、私はちょっと遠くて……多摩川の方なんですけど」
「結構あるねー。じゃ、俺送ってくから」
「え? いいですよ、大丈夫ですから」
「いーからいーから」

 そう言って、他の面々をそれぞれタクシーに乗せて、龍二とゆきが二人で見送る形になった。池畑と吉川、増田と甲野、滝口、そして楠原がタクシーに乗り込み、それぞれゆきたちに手を振っていく。ゆきもぺこりと頭を下げて彼らを見送り、最後に龍二とゆきが残った。

「ゆきちゃん、またねー!」
「今日はありがとうございましたー」

 楠原に最後にそう言って、車が走り出すのを見送ると、ふう、と軽くゆきは息をついた。

「お疲れさまー」
「お疲れ様です」
「さて、俺らも帰りましょー」

 そう言って龍二が次のタクシーを捕まえる。乗って乗って、と促されるまま、ゆきが奥に、龍二が手前に乗り込み、ドアが閉められた。
 行き先を告げると、静かにタクシーが進みだす。

「結局最後まで付き合わせちゃったね。大丈夫?」
「あ、私は全然。っていうか、最後までお邪魔しちゃって……大丈夫でした?」
「だから邪魔じゃないって。ゆきちゃん、気にしすぎだよ。みんな楽しそうだったし、大丈夫。それよか、話題がやっぱり仕事的な話になっちゃうと、よくわからなかったりしたでしょ? そっちの方が心配だったんだけど」
「いえ、すごく楽しかったですよ。それに、ちょっと知ることが出来ない話とか聞いちゃいましたし。でも、それこそ私がいたからしたかった話とかがちゃんとできなかったりしたんじゃないかなって」

 全く業種の違う、そして知らない人間がその場にいる、ということは、それだけその相手にも気を遣って話題を振らなければならない、ということになるのは当然である。
 だから、ゆきとしては仕事の話などがあまり出来なかっただろうから少し申し訳ない気がしてしまうのだ。無理やり連れてこられたのだとしても、である。
 そんなゆきの心配を、逆に龍二はそれを笑い飛ばした。仕事の話だってしたじゃない、と。

「別にマジメな話をしようとして集まったわけじゃないしさ、仕事の話だって十分してたよ。ほら、愚痴とかもいろいろ言ってたでしょ」

 確かに、なんとか言う番組の監督がきつい注文を付ける、だとか、イベントの朝が早すぎる、だとかそんなことを言ってはいた。いわゆる、愚痴である。どんな職業だとしても、そういうのはさほど変わらないものだ。

「だからそんなに言わない。オレが無理言って参加してもらったんだし、楽しかったなら、それでいいんだよ。楽しくなかったら、申し訳ないけどさ」
「いえ、楽しかったです。こう言っちゃうと失礼かもしれないんですけど、でも、やっぱり私の知らない世界だし」
「じゃ、楽しかった、ってそれだけでいいよ」

 にこりと龍二が笑う。龍二だって、ゆきに楽しんでもらえたら、と誘ったのだ。あくまでも誘ったのは龍二であり、ゆきが勝手に乱入してきたわけじゃない。だから、ゆきに申し訳なさそうな顔をさせるのは、龍二の目的とはまったくの正反対になってしまう。
 タクシーは夜の道路を走り続けていく。途中、龍二が「この近くのスタジオに来ることもあるんだよ」などと会話をしながら、ゆきの家の方へと走っていく。

「そういえば、ゆきちゃんの飲み会って、歓迎会だったんでしょ? 新しい人が入ったんだよね?」
「あ、はい。私のいる部署にも新入社員が入ったんです。まあ、別の部署にも入りましたけど、そこと一緒にやったんです」
「へえ、女の子?」
「そうですよ、かわいい女の子。新卒のぴちぴちですよ。あ、せっかく同じ店にいたんだから紹介すればよかったですか」

 くすくすとゆきが笑っていると、いやいや、と龍二も笑った。

「でも、途中で抜けちゃったでしょ? まあ、無理にいることもないって言ったのはオレだけど、大丈夫?」
「平気ですよ、先に帰るって言っておきましたし。それこそ、真幸さんと会ってたのを坂上さんも見てたぐらいだから、真幸さんとどこかに行ったとでも言われてるんじゃないですか」
「え、良いの?」
「何がですか?」

 きょとん、とゆきは目を丸くした。
 龍二としては、それで良いのだろうか、と思ってしまうものである。会社の歓迎会を抜け出して、友人と出かけるなんてことをして、会社の人たちと折り合いが悪くなったりしないだろうか、と。
 だが、ゆきはその逆だ。予定があったのにも関わらず、歓迎会が入ってしまったから少しだけ参加した、という理由だってつけられる。それこそ、飲み会が面白くないから帰ったとは思われないだろう。まあ、そもそもそんなことを思う人があの会社にいるとも思えないのだが。

「……そーいう考え方もあるのか」
「ま、もともと折り合い良いとは言い難いですし。ご近所さん的に仲良くやろうと思ってないから別に良いんです」

 ゆきの考えを聞いた龍二は、うーん、と唸ったが、ゆきはからからと笑っている。
 事実、ゆきにとっては何てことないのだ。同じ会社に『いる』というだけで、ろくにかかわりも持たない、それでいいと彼女は思っているのだから。むしろ坂上などに興味津々で近づかれても、ゆきの不機嫌度が上がるだけである。
 かといって、ゆきと坂上がそこまで合わない、というのを龍二が知っているわけでもない。だからそれで良いのかなあ、と龍二が思ってしまうのも無理はないことだった。

「気にしないでくださいってば。私が坂上さんと合わないのは、同じ会社の同じフロアにいる人たちならほとんど知ってるだろうし、そもそも私も無理に合わせるつもりないだけですから」
「さらっと言うなあ。でも、やりづらくない?」
「まあ……仕事に影響でるとムカつきも倍増ですけどね。影響が出ない部分に関しては、勝手にしてくれって感じですし。だって、会社で就業時間中に大声で普通に話ししてるんですよ? 上司はそれで怒らないし、だから彼女たちは調子に乗ってひたすら騒いでるし。そんなのの仲間入りしたくないですもん。だから、あまり良く思われなくて、仕事で関わる部分だけ話す、っていう程度でちょうど良いんです。私とあの人たちとじゃ仕事に対するスタンスが違うんですよ」

 普段うるさすぎてむっとすることも多々ある。だが、上司が一緒になって騒いでいるようなところだ。そこに参加していればうるさくても気にならないのかもしれないけれど、就業時間中にそれで騒いで、残業時間になって仕事をして、「忙しい」と文句を言うなど、ゆきには決して出来ない。

「そんなので残業するなんて、時間の無駄遣いですよ」

 ゆきが持つその感覚を、彼女たちは持たないのだろうということを、ゆきは十分にわかっている。だから、あわせようとは決して思わない。仕事に対する考え方があまりに違いすぎるのだ。

「うーん、そういうものかな。確かにそれは時間の無駄かもしれないけど、逆に仕事時間中に仕事をして、そのあと遊びに行って沢山友達と話をしてっていうのと、時間が逆転してるだけでしょ?」
「確かにそうかもしれないけど、それは仕事時間中にやることじゃないですよね。会社の人と一日話をしてお給料貰って、残業で割高のお給料貰って、それで『仕事が多い』って言うのはおかしいじゃないですか。仕事あとに友達と会って沢山お話をして、ってやると、お金が出ない、なんて普通に考えるような人たちと仲良くなんてなれませんよ」

 仕事は仕事、プライベートはプライベート、それは社会人として当然だろう。それは龍二にも納得できることである。
 だから、ゆきと坂上が仕事に対するスタンスが違う、というのももちろん理解できるのは出来るのだが、心配にもなってしまうのだ。
 飲み会で偶然に会ったことがきっかけとなったのだが、そのたびに不機嫌な顔をしているゆき。会社帰りに愛想笑いを浮かべて会社の人と話をしている、それはよくある光景かもしれないけれども、顔見知りと会って会社の人たちと離れたことを安心してしまうゆきの姿というのは、やはり龍二としては気になってしまうところなのだ。
 そんなに無理をしてるのかな、と。
 そんなことを話しているうちに、タクシーの運転手がちらりとバックミラーで後部座席を振り返った。

「お客さん、もうすぐ駅ですけどどうします?」
「あ、駅で良いですよ」
「え、家までで良いよ。道、教えて」
「良いですよ、そんなに遠くないですから。これから真幸さんのところも回ってもらうんだし……」

 そう言ってゆきはバックをごそごそと探り始めた。どうしたんだろう、と龍二が見ていると、ゆきが手にしたのは黒い塊──長財布だった。

「えーっと……じゃあ、これで」
「いいから、そんなの。それより、家どっち?」
「すぐだから大丈夫ですってば」
「ダメ。もう日付も変わってるんだからダメです、却下! ほら、早くしないと運転手さんがこまっちゃうよ」

 ちらちらとタクシーの運転手が「どうするんですか」と言いたげな顔をして見ている。飲み会に参加するときも散々ごねたゆきだ。まだごねるだろうか、と龍二は思っていたけれども、う、と一瞬詰まった顔をしてから、ゆきはタクシーの運転手に道を伝えた。

「すみません、近くまでお願いしますね」
「良いってば。近くじゃなくて、うちの前まで行った方がいいよ」
「それは良いです。その場所まで行けば歩いて一分かかりませんから」

 どうしようか、と迷った末にゆきがお願いしたのは、駅からその場所までの途中が結構暗い夜道だからだ。いつもなら平然として帰るのだが、ここまで来てもらったのだから、せっかくだし、と思い直したのだ。
 それに加え、やはり今日は龍二に誘われた飲み会に参加するまでも散々ごねた自分をわかっているので、あまり押し問答を繰り返したくはなかったのである。ごちゃごちゃ言い続けるよりも、早く辿り着いてしまったほうが、龍二も早く帰ることが出来るのだから、と。
 そこから二分程度で辿り着いた場所で、タクシーが止まった。

「ここで良いですか?」
「はい。真幸さん、今日はありがとうございました。楽しかったです」
「いえいえ、どういたしまして。そうそう、今度はゆきちゃんからもメールしてね」
「う……そ、そうですね」

 引き攣りつつも笑うゆきを見て、龍二は「こりゃまた来ないな」と理解した。止まったタクシーから降りたゆきと、いつまでも話をしているわけにもいかないので、龍二はそれ以上は言わず、じゃあ、またねと笑った。
 タクシーが走り去り、テールランプが見えなくなるのを見送って、ゆきは自宅へと向かった。その手には、一万円札が一枚。龍二が頑として受け取らなかったものである。

「悪いことしちゃったなあ……」

 タクシーの中で聞いたところによると、龍二が住んでいるのは世田谷区だということだったので、本当は途中で龍二を降ろしてもらうほうが良かったのではないか、と思ったのだが、それもまたやんわりと龍二に却下されてしまったのだ。
 せめて自宅までのタクシー代を払おうと思っていたのだが、それもまた却下。
 結局、帰りには一銭も使わなかったことになる。それがゆきとしては申し訳ない気持ちで一杯なのだ。基本的におごられるのは彼女が苦手とするところなので。

「一応、次のときはおごりますから、とは言ったものの……次なんかあるのかなあ」

 そもそも、どれもこれも偶然が呼んだ出来事であって、意図的に会おうとしたわけではないだけに、次などあるとはあまり思う事ができないゆきである。

「せめてお礼のメールだけでも送っとこう……」

 帰宅途中になるのは確実だから、大丈夫だろう、そう思ったゆきは、自宅についてすぐに携帯電話をぽちぽちと押し始めた。



「しっかりした彼女ですねえ」
「え? いや、違いますよ」

 あはは、と笑って龍二は適当に流した。突然のタクシーの運転手の言葉に驚いたのだ。
 確かに「彼女」ではない。まあ、気にならないといったら嘘になるが。
 一人になったタクシーの中で、龍二はこの日のことをちらりと思い返した。楽しい飲み会であったのは確かだ。思いもよらない人物と偶然また出会えたことによって、楽しさはまた色を変えたけれど、それもまた楽しかった。
 ただ、やはり少しばかり心配になるのは、仕方のないことだと思う。
 どこか、排他的なゆきを思い出すと、大丈夫かなあ、という気持ちがどうしても起きてしまうのだ。
 偶然出会った最初、前回、そして今回。どれもこれも、ゆきの会社の人が少なからず絡んでいる。そしてそのたびに、一度はゆきの不機嫌な顔を見ているのだ。日々勤めている会社の人物と絡んで、毎回不機嫌な顔をしているというのは、日々の仕事ではどれほどストレスを溜めているのだろう、と気になってしまうのも無理はなかった。

「それこそ、相当無理してるんだろうなあ……」

 ぽつりと呟いて、龍二はタクシーの窓から外を眺めた。
 彼がいつも見る風景とはだいぶ違う。この辺りに来ることは仕事でもほぼない。ここを通り過ぎたことならばないとは言わないが、そういうときはほぼ電車だ。ある意味、新鮮な風景でもある。
 外をぼんやりと眺めていると、龍二のポケットがぶぶ、と震えた。ポケットにしまっていた携帯電話が鳴っているのだろう。こんな時間に誰だ? と思いつつ、携帯を取り出すと、『新着メール』の文字が目に飛び込んだ。
 二つ折りの携帯を開いて、ぽちぽちとボタンを押すと、龍二の頬がふわりと持ち上がる。

『真幸さんへ

 今日はありがとうございました。楽しかったです。
 帰りのタクシー代、ご馳走になっちゃってすみませんでした。
 何か機会があったら、その時はおごらせてもらいますね。
 今日はお疲れ様でした。おやすみなさい

 暁』

 返事ではなく、初めてゆきから来たメールを見て、わずかに龍二が微笑んでいた。

「次の機会ね……こりゃ、作らないわけにはいかないでしょ」

 多分、こちらから言わないと機会は訪れないだろうから。そんなことを思いながら、龍二は嬉々としてメールを二件ほど送っていた。





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